データベースから欲しい情報(レコード)を取り出すRepositoryには、「find」や「findBy」といった標準機能が備わっています。以下記事で紹介したとおり、特に「findBy」は使い勝手がよく、これで十分な場合も多々あります。
ただ、検索条件を複数設定したり、あいまい検索(キーワードを含むものすべてを検索)したりというような場合には、さすがに「findBy」だけでは使い勝手が悪くなってしまいます。
そこで本記事では、Repositoryを拡張(オリジナルメソッドを作成)し、より細かな条件でレコードを取り出す方法を紹介します。
デバッグモードを設定しておくと、エラーが起きたときに詳細情報が表示されるようになります。
エラー箇所を探しやすくなるので、開発前に設定しておくのをオススメします。
デバッグモードの設定方法については 以下記事 で解説しています。
カスタマイズ後は、デバッグモードの解除を忘れないように。
まずはRepositoryを新規に作成する
EC-CUBE(Symfony)でデータベースから特定のレコードを取り出すには、取り出したいレコードが保存されているテーブルに対応したRepositoryを使います。
商品テーブルのようなデフォルトで用意されているRepositoryは「src/Eccube/Repository」下にまとめて保存されていますが(商品テーブル ⇒ ProductRepository.php)、src下のファイルには直接修正等加えない方がよいので、「app/Customize/Repository」下に以下のようなRepositoryファイルを新規作成します。
<?php
namespace Customize\Repository;
use Eccube\Entity\Product;
use Eccube\Repository\AbstractRepository;
use Symfony\Bridge\Doctrine\RegistryInterface;
/**
* CustomProductRepository
*/
class CustomProductRepository extends AbstractRepository
{
public function __construct(RegistryInterface $registry)
{
parent::__construct($registry, Product::class);
}
}
ベースとなるシンプルなRepositoryファイルです。
(こちらは商品テーブルに紐づくRepositoryです。必要に応じてEntityなどを変更してください。)
ここで作成したCustomProductRepositoryクラスに、オリジナルの検索条件をもつ新しいメソッドを追加していきます。
Exprクラスを使って複雑な検索条件を設定する
QueryBuilderの「expr」というメソッドを呼び出すことで、検索の条件となる式を作成できます。
といってもピンとこないかと思いますので、以下の例を用いて解説します。
Exprクラスの基本的な使い方
下記コードは、引数に「商品名」を指定するとそれに合致したレコードを返してくれるメソッドです。
public function findByName($value)
{
$builder = $this->createQueryBuilder('p');
return $builder
->where($builder->expr()->eq('p.name', '?1'))
->setParameter(1, $value)
->getQuery()
->getResult();
}
$builder = $this->createQueryBuilder('p');
まずQueryBuilderインスタンスを作成し、変数$builderに代入しておきます。
引数には「’p’」が指定されており、これ以降のメソッドで使用するテーブルを「p」として指定できるようになります。
->where($builder->expr()->eq('p.name', '?1'))
続いて、「where」の引数に条件を指定します。
ここでは、exprメソッドがもつ「eq」メソッドを利用しています。これは「=」の式を追加するメソッドで、第一引数に対象となるフィールドを、第二引数に値を指定します。
すなわちこの検索条件は、「nameフィールド(商品名)= ?1」となります。
->setParameter(1, $value)
「setParameter」で、第二引数の値を第一引数にセットします。
$valueはこのメソッド(findByName)の引数なので、このメソッドをControllerで呼び出すときに指定した引数が「?1」となります。
->getQuery()
->getResult();
最後に「getQuery」メソッドでQueryクラスのインスタンスを取得し、その実行結果を「getResult」で取得します。
慣れないとちょっとややこしいかもしれませんが、この型さえ掴めれば、あとは検索したい条件に応じたexprのメソッドを呼び出すだけです。(exprがもつ代表的なメソッドは次項の通りです。)
Exprに用意されている主なメソッド一覧
前項の「->where($builder->expr()」に続くメソッドを以下の通り変えることで、色々な条件で検索できるようになります。
- 値が等しい
-
eq ( フィールド名, 値 )
- 値が異なる
-
neq ( フィールド名, 値 )
- 値より小さい
-
lt ( フィールド名, 値)
- 値以下
-
lte ( フィールド名, 値)
- 値より大きい
-
gt ( フィールド名, 値)
- 値以上
-
gte ( フィールド名, 値)
- あいまい検索
-
like ( フィールド名, 値)
- 複数検索
-
in ( フィールド名, 配列)
あいまい検索
Exprのlikeメソッドを使うと「あいまい検索(キーワードの一部を含む場合に取得)」ができます。
public function findByLikeName($value)
{
$builder = $this->createQueryBuilder('p');
return $builder
->where($builder->expr()->like('p.name', '?1'))
->setParameter(1, '%' . $value . '%')
->getQuery()
->getResult();
}
setParameterに値をセットする方法が少し特殊です。
「%」はワイルドカードと呼ばれ、ここにはどのような文字(1字でも複数でも可)も当てはめることができます。この例では「%$value%」となり、メソッドの引数に指定した値が含まれるすべてのレコードを検索し、取得できます。
複数検索
Exprのinメソッドを使うと「複数検索」ができます。
public function findByNames($values)
{
$builder = $this->createQueryBuilder('p');
return $builder
->where($builder->expr()->in('p.name', $values))
->getQuery()
->getResult();
}
setParameterがなく、引数$values(配列)をそのままinメソッドの第二引数に指定します。
こうすることで、配列の値すべてが検索対象となります。
条件を複数設定する(AND / OR)
「andWhere」または「orWhere」を用いることで、条件を複数追加できます。
andWhere
設定した条件すべてに当てはまるもののみを検索します(AND検索)。
where( 条件, 値 ) -> andWhere( 条件, 値 )
whereに続けてandWhereで同じように条件を設定します。andWhereは複数追加してもOKです。
以下は、「第一引数以上のID かつ 第二引数以下のID をもつ商品レコード」を検索するメソッドです。
public function findByIDs($value1, $value2)
{
$builder = $this->createQueryBuilder('p');
return $builder
->where($builder->expr()->gte('p.id', '?1'))
->andWhere($builder->expr()->lte('p.id', '?2'))
->setParameters([1 => $value1, 2 => $value2])
->getQuery()
->getResult();
}
orWhere
設定した条件のいずれかに当てはまるものを検索します(OR検索)。
where( 条件, 値 ) -> orWhere( 条件, 値 )
whereに続けてandWhereで同じように条件を設定します。orWhereは複数追加してもOKです。(AND検索と同じです。)
以下は、「第一引数の値に合致するID または 第二引数の値に合致する名前 をもつ商品レコードを検索する」メソッドです。
public function findByIDOrName($value1, $value2)
{
$builder = $this->createQueryBuilder('p');
return $builder
->where($builder->expr()->eq('p.id', '?1'))
->orWhere($builder->expr()->eq('p.name', '?2'))
->setParameters([1 => $value1, 2 => $value2])
->getQuery()
->getResult();
}
レコードの取得順を変える(orderBy)
「orderBy」を用いることで、レコードの並び順を昇順(ASC)か降順(DESC)に指定できます。
orderBy( フィールド名, 並び順 ) -> addOrderBy( フィールド名, 並び順 )
第一引数に基準となるフィールド名、第二引数に並び順(ASC / DESC)を指定します。
また、並び順を追加したい場合はaddOrderByを使います。
以下は、「商品レコードをすべて取得し、IDの大きい順(降順)で並べ替える」というメソッドです。
public function findAllwithDESC()
{
$builder = $this->createQueryBuilder('p');
return $builder
->orderBy('p.id', 'DESC')
->getQuery()
->getResult();
}
レコードの取得範囲を変える(setFirst / setMax)
「setFirstResult」でレコードの取得開始位置を、「setMaxResult」で取得する最大レコード数を指定できます。
setFirstResult( 整数 ) -> setMaxResult( 整数 )
setFirstResultの第一引数に0を指定すると1番目、1を指定すると2番目のレコードから取得されます。
setMaxResultは、指定された値の数だけレコードを取得します。(足りない場合はその数まで。)
以下は、「商品レコードをすべて取得し、2番目から4番目のレコード(計3つ)を検索する」メソッドです。
public function findSome()
{
$builder = $this->createQueryBuilder('p');
return $builder
->setFirstResult(1)
->setMaxResults(3)
->getQuery()
->getResult();
}
取得するレコードの数が膨大になる場合、負荷を低減するためにこのメソッドを使うと良いでしょう。
まとめ
以上、データベースからレコードを取り出すための条件設定について、Exprの使い方を中心に解説しました。
実はExprを使わずとも、条件式をテキストで用意したり「DQL」と呼ばれる方法を利用したりすれば同じようにレコードを検索できます。が、SQLに慣れていない方にはちょっと難しいので、まずはEC-CUBE(Symfony)独特の機能であるExprを、ぜひ使ってみていただければと思います!