転写印刷とは? 名入れの印刷技術 #05

転写印刷について

印刷したいデザインや文字をいったんフィルム(シート)や紙* などに印刷し、それを印刷したいグッズなどに押し当てる* ことで名入れする方法を「転写印刷」といいます。

1.デザインを作成
2.フィルムや紙に転写
3.転写したデザインをグッズに押し当てる
4.完成
* 転写フィルムや転写シートと呼ばれ、まれにメディアとも呼ばれます。
* 実際の作業では熱や圧力も加えます(記事中で解説)

本記事では、転写印刷の基本的な原理や種類、方法について解説します。

目次

そもそも転写とは?

転写というワードを辞書で調べると「文章や図などを他に写し取る(書き写す)こと」と書かれています。
要は「コピペ」でいうところ「ペースト」に当たる部分です。
(ちなみに、「コピー」に当たる部分は「複写」といいます)

また「転写」というワードをググると、DNAやRNAといった生物学で使われる「転写」がヒットすると思います。
「転写印刷」とはもちろん関係ありませんが、行われていることは似ていますね。

生物学的転写と転写印刷の比較
生物学の転写では、転写したDNA情報をもとにタンパク質が作られる(=翻訳)

「熱転写」と「昇華転写」

転写印刷は、その印刷方法によって「熱転写」と「昇華転写」の2つに分類することができます。

熱転写

デザインを転写したフィルム(メディア)を商品に押し当て、そこに熱と圧力を加えて印刷する方法。

一般の熱転写用フィルムには糊が付いています。
フィルムを商品に当てた状態で熱と圧力をかけると、その糊が溶けて商品の素材になじみ、デザインが印刷されるという仕組みです。

転写フィルムの印刷例
転写フィルム(メディア)にはたくさんの種類があり、デザインの色や形状、印刷物の素材などによって使い分けます

熱と圧力をかけるには家庭用アイロンで十分な場合(アイロンプリントなど)もありますが、ムラなく均等に熱と圧力がかけられるよう専用のプレス機を使うことが多いです。

転写プレス機の見本
転写用プレス機の例

熱と圧力は、転写フィルム(メディア)の種類によって変わりますが、温度はだいたい100~150℃くらいが多いです。
※80℃程度で印刷できる 特殊なフィルム もあるようです。

このような印刷の諸条件から、100℃以上に耐えられる & 平らに圧力をかけられるグッズ(素材)が対象です。

Tシャツやタオル、ハンカチ、ブランケット、エコバッグ、トートバッグなど、
平らに広げられる繊維素材グッズへの名入れにぴったり!
(この記事の後半で、熱転写したグッズの例をいくつか載せています)

グッズの形状によっては、紙や皮革素材のノートや手帳、ふせんなどに名入れできる場合もあります。

昇華転写

まず昇華転写専用の特殊インクを使い、デザインを専用の紙(転写紙)に転写。
次にその転写紙を商品に押し当て、熱と圧力を加えてインクを定着させる印刷方法。

一見すると、専用のインクと紙を使う以外は熱転写と同じように思えますが、最後の印刷方法が異なります。
熱転写では「糊」でくっ付けるイメージですが、昇華転写では「インクを揮発させて対象物に浸透させる」ことで印刷します。

転写紙上に固まったインクが気体となってグッズに移るので、昇華転写というのですね。
※「昇華」とは「個体 → 気体に変化すること」

こちらも熱転写同様、Tシャツなど平べったい素材が対象となることが多いですが、マグカップのような円筒形のアイテムにもプリントできるよう専用のプレス機を持っている業者もあります。
(熱転写でもできるようですが、昇華転写の方が多い印象)

タンブラーやボトルなどの円筒形グッズへの名入れは 回転シルク印刷 が一般的ですが、フルカラーに対応できないという欠点がありました。
転写印刷であればこれらのグッズにもフルカラーでプリントでき、デザインの幅が広がりますね。

昇華印刷用インクには染みこみづらい素材もあり、コットンなどの天然素材には不向きなことが多いです。
この辺りは名入れ業者によってかなり変わるので、事前にどのようなものに印刷可能か確認しておきましょう。

転写印刷のメリット・デメリット

メリット
  • 版の作成が不要(データのみでOK)で、小ロットでも安価に対応しやすい
  • フルカラーやグラデーションのかかったデザインでもOK
  • 従来の印刷方法より広範囲にプリントできる
    ※転写フィルム(メディア)の種類による
  • 発色が良い
  • UVフルカラー印刷 ではプリントできない布系素材に対応できる
デメリット
  • 大量に印刷する場合、パッド印刷 や シルク印刷 の方が基本的に安価
    ※転写印刷ではインクの他に転写フィルム(メディア)も必要 かつ 転写したフィルムを印刷物の形などに応じてカットする必要がある。単純にインクを塗布していく上記の印刷方法に比べ、材料も工程も多くなりがち。
  • プリント部分に均一に温度と圧力を加える必要があるため、凹凸やうねりのある(フラットでない)素材には印刷が難しい
    また、割れる心配のあるもの(ガラスやプラスチックなど)も印刷できないことが多い
    ※プレス機や転写フィルム(メディア)の種類によって対応可能な場合もある
  • 圧力をかけたとき、素材によってはプレス跡が残ることがある(特にラバーやビニル素材で目立つ)
  • 100℃以上の高温に耐えられない素材だと、溶けたり変形したりする恐れがある

転写したグッズの例

熱転写のグッズ集
筆者が熱転写で自作したグッズの数々

ここでは、筆者が実際に熱転写で作成したグッズの一部をご紹介します。
「自分でもオリジナルグッズを作成してみたい!」と興味をもっていただいた方は、是非商品ページ もしくは 企業公式サイト より、お気軽にご連絡ください^^

熱転写後、コットンバッグ(M)ネイビー

商品:コットンバッグ(M) ネイビー

色の移り変わりを表すグラデーションと、葉脈などのディティールを綺麗にプリント

熱転写後、厚手コットンバッグハンドル付リュック ブラック

商品:厚手コットンハンドル付リュック ブラック

カラフルなデザインや写真でも、発色良く鮮やかに仕上がっています。また、下地の色がプリント部分に移ってデザインが変色する ” ブリード ” という現象も生じていません。

熱転写後、マルチ巾着 ネイビー

商品:マルチ巾着 ネイビー

ツヤツヤしたポリエステル生地でもプリントOK。
ガーメント(布)用インクジェットプリンタではできない印刷です。

熱転写後、ライトデニムマルシェバッグ インディゴ

商品:ライトデニムマルシェバッグ インディゴ

デニム素材でももちろんOK。
かなり広い面積に印刷できるのもポイントです。

まとめ

以上、今回は名入れの印刷技術の一つである「転写印刷」について簡単にまとめてみました。

版が不要で小ロット対応できるというメリットもポイントですが、個人的には「フルカラー&発色が良い」ところが特にポイント。

「大量に刷ってばら撒く」というノベルティ、販促品の枠を超えて、
「お客さんに有償販売できる」というオリジナルグッズ制作&販売に値する品質が実現できます。

上述のとおり小ロット対応もしやすいため、「実験的に数個からグッズ制作をしてみる」といった対応も可能。
あとでデザインの変更もしやすく、個人の方にも気軽に取り入れやすい印刷方法といえます。

グッズ制作に興味のある方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?

肝心のグッズ自体の品質も重要ですので、素材選びをおろそかにしないように…
特に安価なバッグは縫製が甘いことも多いです。

今後私自身も熱転写技術に実際に触れ、いろいろな素材で実験しつつグッズ制作を進めていく予定です。
会社の規模や個人を問わず、オリジナル商品を制作したい方のお手伝いになればと思っていますので、何か進展があればこちらのサイトにアップしていきます!

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