ノベルティと心理学 〜「単純接触効果」「返報性の原理」「ピーク・エンドの法則」〜

ノベルティの心理的効果について

集客率をアップし、販売活動を促進させるために用いられる各種ノベルティグッズ。
この記事では、ノベルティのもつ販促効果を心理的側面から深堀りしてみようと思います。

目次

ノベルティのもつ心理的効果

そもそもノベルティとはどういう目的で使われるのでしょうか?
Wikipediaでは「企業が自社や商品の宣伝を目的として、それらの名称を入れて無料配布する記念品」と定義されており、販促品と呼ばれたりもします。

ノベルティを配布することで販促効果に繋がるということですが、ノベルティはチラシやCMのように売りたい商品・サービスを直接宣伝するわけではないのに、なぜ販促に有効なのか?
その答えの一つには、以下3つの心理法則が関係しています。

  • 単純接触効果(ザイアンスの法則)
  • 行為の返報性
  • ピーク・エンドの法則

本記事では、これらの心理的効果をノベルティとの関連を含めつつ解説します。

単純接触効果(ザイアンスの法則)

まずは「単純接触効果(別名ザイアンスの法則)」
名入れの概要に関する記事でも触れましたが、特に名入れ(企業ロゴや会社名、イラストなどをグッズにプリントすること)をしたノベルティにおいては、この単純接触効果が最もシンプルかつ重要と言っても過言ではありません。

単純接触効果とは?

同じ人やモノ、刺激に触れる回数が増えれば増えるほど、その人やモノ、刺激に対して良い印象を持つようになる心理のことを「単純接触効果」と呼びます。日常生活で見られる例としては、

  • 最初はあまり印象に残らなかった音楽が何度も聞いているうちに好きになる。
  • CMやチラシでよく見かける商品・サービスを試してみたくなる。
  • 通勤や通学でよく見かける人になんとなく好意を抱くようになる。

などが挙げられます。心当たりのある人は多いのではないでしょうか?

この単純接触効果の面白いところは、「閾下」でも起こるということです。

閾下とは心理学用語で、見えた・聞こえたというような刺激が感じられないほど短い時間のこと。要するに無意識の状態。自分では前に見たことがあると認識していなくても単純接触効果は作用し、好意を抱くようになるのです。

この無意識に抱く好印象は強力で、人はいかにも宣伝と思われるものに抵抗を持ってしまいがちなのですが、自然と入ってくるものは受け入れやすい性質があります。

「広告を見て購入した(させられた)」のではなく「自分で選んで購入した」という感覚の方が、気持ち良いですよね。

単純接触効果はなぜ起こるのか?

単純接触効果が引き起こされる要因については色々な説があり、その中でも「知覚的流暢性」というものが有力とされているようです。

知覚的流暢性についてざっくり言うと、「対象物を無意識ですぐに認識できること」です。

ある対象物を何度も見たり聞いたりすると、いちいち頭で考えることなく「これは○○」と分かるようになります。
一方、初めて見たり聞いたりするレベルの馴染みのない、もしくは薄いものは、それが何か理解するまでに時間がかかり、馴染みのあるものに比べてストレスがかかります。

そして前者のような、「対象物をパッと見たり聞いたりするだけですぐに認識できる状態」は脳にとってストレスがない状態であり、その心地よさを感じた脳は、「対象物が好きなんだ」と錯覚してしまうのです。対象物がすっと頭に入ってくるのは、本当は何度も見たり聞いたりしたことがあるからなのに、それが好きだから頭に入ってくるんだ、と勘違いしてしまうのです。
これが、知覚的流暢性による単純接触効果の説明です。

ノベルティによる単純接触効果

企業ロゴや会社名などをプリントした名入れノベルティ。
すでに想像がつくと思いますが、それらはまさに単純接触効果を起こさせる手段になります。

企業ロゴなどが入っていたとしても、使用者がそのロゴを気に入っているなどでもない限り、いちいちそれを意識することはないでしょう。

しかし前述の通り、単純接触効果は使用者の意識がなくても働くという特徴があり、無意識のうちにその名入れされたデザイン(ロゴや社名など)に好意をもつようになるのです!

この効果を十分に活かせるようなノベルティとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 名入れ可能な、デザインがシンプルなグッズ → 接触させたいものを入れられないと始まらない
  • 使い捨てではなく、繰り返し使えるグッズ → 接触回数を増やす
  • 日常生活で多用できる実用的なグッズ → 接触回数を増やす
  • 人の目に触れる機会の多いグッズ → より多くの人に接触してもらう

目的や状況によって適切なノベルティはもちろん変わりますが、グッズ選びの一つの指標として考えておきたいですね。

返報性の原理

次に紹介するのは「返報性の原理(法則)」
日常生活に加え、ビジネスなど交渉場面でもよく用いられているテクニックとして紹介されることの多い心理法則です。ノベルティにおいても、その効果を利用することができるでしょう。

返報性の原理とは?

人は他人から何らかの施し(貸し)を受けたとき、例えばプレゼントをもらったりした場合に「お返しをしなければ」という感情に駆られます。これが返報性の原理と呼ばれるものです。

よく紹介される例は、スーパーの試食やアパレルショップでの試着です。無料で食品をもらったり試着させてもらったのだからお返しに商品を買ってあげなければ! と多くの人が感じると思います。

またSNSでイイねをしあったり、職場でお土産を渡しあったり、バレンタインで義理だとしてもお返ししたり、日常生活でも頻繁に起こる現象ですね。
(ちなみに筆者は、この返報性の原理による感情が煩わしくなってしまい、友人や同僚の誕生日にプレゼントを買う、旅行したらお土産を買っていくなどは、基本的にやらなくなりました。。。)

返報性の原理はなぜ起こるのか?

前述の例を見ても分かる通り、返報性の原理は日常生活のあらゆる場面で実感する機会があり、理由を考えずとも理解いただける方が多いと思います。

実際、頭で考えて働くような作用ではなく人間の本能的なもので、
「助け合える良好な人間関係は生存に有利 ▶ 自分も恩を返さないといけない」
と感じてしまうところから来ているようです。

ノベルティによる返報性の原理

もともと無料で配ることが多いノベルティは、食品の試食や無料サンプルと同じように返報性の原理が働きやすいといえます。ただこれらと違うのは、ノベルティは売りたい商品やサービスと関係ない場合が多く、必ずしも受け手が欲しいと感じるものを渡せるわけではないので貸しが感じづらい点です。
逆に、「要らないものを押し付けられた」と思われてしまう恐れすらあります。

そういった点を考慮すると、当然ですがより多くの受け手に喜ばれるものを選定することが大事です。受け手の層(男性か女性か、大人か子供か、サラリーマンか主婦か、など)によって変わりますが、基本的には以下をようなものを軸に考えると良いでしょう。

  • 実用的なもの → どんなノベルティが嬉しいか? というアンケート結果の第一位です。
  • 持ち帰りやすいもの → サイズの大きく嵩張るものや重いものはNG

万人に喜ばれるものは難しいですが、少なくとも「もらって迷惑」と感じられることだけは避けられるようにグッズを選定しましょう。

ピーク・エンドの法則

最後に取り上げるのは「ピーク・エンドの法則」です。

学生時代の思い出の印象を決定づけるものとして、または交渉場面での決定打としても使われることがある心理。ノベルティを上手く活用すれば、この心理に則ってより好感度の高い印象を残すことができます。

ピーク・エンドの法則とは?

とある一連の出来事について、最も感情が動かされた絶頂期(ピーク)と、その出来事が終わったとき(エンド)の印象により、その出来事全体の印象が決まってしまうことをピーク・エンドの法則と言います。

分かりやすい事例は、高校時代や子どもの頃の家族との思い出。最も印象に残っているイベント(大いに楽しんだ文化祭や家族旅行なのか、虐められたり喧嘩したりした辛い経験なのか)と、終わるときの状況(志望校に合格したのか落ちたのかなど)を思い返してみて、それらがポジティブであれば全体としての評価もポジティブになり、反対にネガティブであれば全体としての評価もネガティブになります。

ビジネスの場面でも、「出だしのプレゼンは歯切れが悪く資料も読みにくかったが、サービスの説明には心を動かされた。最後の締めも綺麗で分かりやすかった」となれば、細かい失敗はあまり問題にならなくなり、顧客に良い印象を残して商談を成立させやすくなります。

このように、あらゆる出来事はピーク時とエンド時の印象がもっとも大事というわけですね。

ピーク・エンドの法則はなぜ起こるか?

一言でいうと、「人はピークとエンドの瞬間しか印象に残らない」ということです。

遊園地のアトラクションや映画などは、その一連の流れのうち大部分がつまらないもの(行列に並んだり、背景の説明であったり)のはずです。

しかし、人はそんなつまらないものよりも、実際にアトラクションに乗った感想や映画の面白い部分のみに注目してしまい、「あのジェットコースターは面白かった」「あの映画は見る価値あり」と決定付けるのです。

ノベルティによるピーク・エンドの法則

ノベルティは、基本的に販促品としての立ち位置。メインの商材やイベントではありません。
したがって、ノベルティ自体がピークの中心になることは少なく、むしろサブ役、サポートするものとして取り扱うことになります。

例えば、以下のようなシチュエーションでノベルティを活用できます。

  • ボールペンを忘れて商談に来てしまったお客さんに、無料でボールペンを差し出す → ピークの印象をアップ
  • お客さんがパーティやレストランを去るとき、手土産としてお菓子などを手渡す → エンドの印象をアップ
  • 年末の挨拶時に、ほんの感謝の気持ちとしてタオルなどを渡す → エンドの印象をアップ

あくまで販促目的である以上、売りたい商品・サービスを徹底して営業・開発すべきですが、それらメインの活動をより良い印象にするものとしてノベルティは応用できるでしょう。

まとめ

以上、今回は心理的側面から、ノベルティの有用性について纏めてみました。

あまり深く考えることなくノベルティを配っていた、という方が多いと思いますが、実は裏で色々な心理が働き、その名の通り販売促進につながっています。

本記事が、より良いノベルティの選定や使い方の参考になれば嬉しいです。
さらなる集客率アップ、売上アップを目指し、ぜひ検討してみてください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次