先日、「名入れとは?」という記事で、名入れの概略を纏めました↓

本記事では、名入れで用いられる最もメジャーな印刷技術、パッド印刷について解説していこうと思います。
パッド印刷は、ノベルティでよく用いられるボールペンや置き時計、タンブラー、カップ、モバイル充電器など、繊維素材以外のアイテムに幅広く用いられ、細かなデザインでも綺麗にプリントできる印刷方法です。
これから、会社ロゴや社名、または自分オリジナルのデザインを、お気に入りのマグカップやペンなどの文房具にプリントしてみたいと思っている方は、十中八九「パッド(PAD)印刷」というプリント方法を見かけることになるかと思います。
この記事では、そんな突然出てきた専門用語「パッド印刷」について、その印刷原理やメリット・デメリットを初心者向けに分かりやすく纏めました。
また、最後にはパッド印刷にオススメのグッズも少し紹介していますので、名入れする際の参考になれば嬉しいです!
パッド印刷の原理
そもそもパッド印刷とは何か?
印刷の方法や手順を以下の通りまとめました。
パッド印刷とは印鑑の逆バージョン
パッド印刷をざっくり一言でいうと、「印鑑の逆バージョン」です。
印鑑の場合、印鑑を朱肉に付け、それを紙などに押しつけることで赤色が移り押印できます。パッド印刷のイメージは、この方法をひっくり返したものです。
印鑑であれば、印鑑自体は硬質(硬いもの)で、印刷面は紙で柔らかい素材です。印鑑を紙に押し付けた際、紙側が印鑑面に沿うよう変形してくれるので、きれいに押印できます。もし硬い机などに直に紙を敷いて押印する場合は印鑑パッドを敷くと思うのですが、あれは紙を変形しやすくしているのですね。
一方、ノベルティの多く(ペンやカップなど)は硬質なものが多く、同じように硬質な印鑑などを押し付けても上手く印刷できません。(接地面が不安定なため、色が抜けたりまだらになったり)
そこで、逆に印鑑側を柔らかくし、硬いものでも綺麗に印刷できるようにしたのがパッド印刷です。
パッド印刷では、印鑑側に当たる部分を「シリコンパッド」と呼び、プニプニした柔軟性のある素材です(下図)。このパッドに専用のインキを付けて印刷したいグッズに押し付けることで、硬いものでも綺麗に印刷することができます。

この柔らかい「印鑑」が対象物の形状に合わせて柔軟に変形することで、プラスチックやステンレスなどの硬いものはもちろん、ペンやタンブラー、ボトルのような曲面でも名入れすることができるのです。
パッド印刷の手順
実際の印刷現場での流れは以下のようになります。
- 印刷したいグッズと、印刷したいデザインを掘った板(凹版)をパッド印刷機にセット
※凹版は業者に依頼して作成します。詳しくはこちら - 凹版にインキを流し込み、デザインから漏れ出た余分なインキを掻き取る。
(掘ったデザイン部分にのみインキが残っている状態) - シリコンパッドを板に押し当て、インキを付ける。
(パッドにデザイン状のインキが付いている状態) - インキの付いたパッドをグッズに押し当て、名入れ完了!
(朱肉に付けた印鑑を紙に押し当てるのと同じですね) - 次の印刷に備え、パッド表面に残ったインキ汚れをクリーナー(粘着テープ)で掃除しつつ次のグッズをセット。

こちらのイラスト動画も分かりやすいので、よりイメージを膨らませたい方はどうぞ↓
パッド印刷で見かける専門用語
シリコンパッド | 上述の通り → こちらから飛べます。 |
転写(てんしゃ) | あらかじめデザインを別のもの(パッド印刷の場合は版)に用意しておき、パッドなどを使って対象物(ノベルティなど)に印刷すること。 いわゆる印刷機(プリンター)は、対象物に直接印刷するので転写とは呼ばない。 |
凹版(おうはん) | スチールや銅などでできた板で、印刷したいデザインを掘ったもの。 ちなみに印鑑の場合は逆で、デザイン(文字)以外を掘る凸版。 |
エッチング | 化学薬品などを用いて、金属やガラスなどを腐食(溶解)させること。凹版を作る際、元になる板にデザインを掘ることを指す。 |
スキージー(ブレード) | まっすぐで滑らかなゴム製のブレード。パッド印刷では、凹版にインキを流し込んだ際の余分なインキを取り除くために使う。 なお、清掃業者が窓を拭く際に、洗剤や水気を取り除くのに使われるのもスキージーの一種である。 |
版下(はんした) | 印刷したいデザインの原稿。名入れでは、紙など実物のものではなくイラストレーターのAI形式ファイルなど、一般にデジタルデータを指す。 |
製版 | 版下を元に、印刷の原版を作ること。パッド印刷の場合、凹版を作る作業を指す。 |
イラストレーター(イラレ) (Illustrator) | Adobe(アドビ)社が提供している、イラストやロゴなどのデザインを作成できるツール(ソフトウェア)。 デザイナーの間ではおそらく最も使われているツール。多機能で便利だが、使いこなすには勉強と慣れが必要。 |
AIデータ | イラストレーターで作成されたデータの形式。ファイル名の最後(拡張子)が「.ai」になっている。パッドなど、名入れの版下はAIデータを指すことが多い。 |
アウトライン化 | ざっくりいうと、デザインを縁取って縁以外の余計な線(パス)を消すこと。製版はこの縁(アウトライン)に沿って作られるため、余分な線がある もしくは 縁が設定されていない場合、デザイン通りに凹版が作れなくなる。デザインを見ただけでは、この縁や線がどうなっているかは分からないため、基本的にはイラストレーターで確認し、修正も行う。 |
パッド印刷のメリット・デメリット
パッド印刷の原理がざっくり分かったところで、メリットとデメリットを纏めてみます。
なお、メーカーによって様々なタイプのパッド印刷機が開発されており、ここで挙げたデメリットを克服したものや付加価値を増やしたものもあります。
(そういったものは、ノベルティではなく実際の販売商品に、ブランドロゴやラベルなどを入れる場合に使われることが多いです。)
本サイトでは、あくまで「ノベルティへの名入れ」を前提として纏めていますので、予めご留意ください。
- 数mmレベルの小さくて精密なイラストや小さな文字でも、かなりリアルに印刷可能。
- ボールペンやボトルなどの曲面や、多少の凹凸がある素材でも印刷可能。
- もっとも安価な名入れ方法で、版の製作費用も最安値であることが多い。
- 基本的に1色での印刷となる。(多色もできるが専用の機械が必要で、色数分の版も必要。)
- グラデーションやシャドーなど、色数を表現できないデザインは印刷不可。
- パッドの大きさに限りがあり、印刷面積が小さい。(一般的に縦・横数十mm程度まで。)
- パッドに移せるインク量に限りがあり、繊維などの吸水素材には向かない。(プラスチックや金属などの硬質素材が対象になる。)
- 洗剤によっては、洗浄時にインクが剥がれ落ちる可能性がある。
※パッド印刷と並ぶメジャーな印刷技術に「シルク印刷」があります。
繊維素材にも名入れでき、大きな印刷面積が特徴です。以下記事でまとめていますので、本記事と合わせてご覧ください。

パッド印刷にオススメのグッズ
最後に、パッド印刷できる最新のオススメグッズを少しだけ紹介します。
各商品ページには、印刷できる場所や面積も表示していますので、「こんなところに印刷できるのか」「印刷面積はこれくらいなんだな」と感じてもらえると、他の商品でも参考になるかと思います。
- ゼブラ ブレンボールペン0.7mm
ゼブラのシンプルなボールペン。シンプル故に名入れが映える。 - スリムサーモステンレスボトル 200ml
シンプルでスタイリッシュなステンレス製ボトル。300ml、500mlサイズもあります。 - ステンレスサーモタンブラー380ml
シンプルなサーモタンブラー。ロゴやメッセージを入れれば良いアクセントに。 - 電子メモパッドミニ
最近流行りの電子パッド。こんなものにも印刷できちゃいます。
他にもたくさん種類があり、残念ながらここでは紹介しきれません。
もっと知りたい方は、こちらから検索してみてください。→ パッド印刷可能ノベルティ・販促品
まとめ
以上パッド印刷について、なるべく分かりやすく纏めてみたつもりですが、いかがでしたでしょうか?
私もまだまだ勉強中なので、調べ足りなかった部分などは随時追記・修正していこうと思いますが、少しでも参考になれば嬉しいです。
今後も引き続き、名入れや印刷技術に関する記事を作成していきますので、よろしくお願いします!